2016年12月13日

サンユキサマ

私のじいちゃんは、私が小さかった頃によく山の話をしてくれた。
その頃はまだその話を信じていたけれど、年を重ねるごとにそれらの話は、
じいちゃんが私を楽しませる為にしてくれた、与太話だと思うようになっていた。



しかし、最近母ちゃんからある出来事を聞いたことで、
じいちゃんの話は本当かもしれないって感じてきたんだ。
ちょっと記憶が曖昧な部分があるんだけども、じいちゃんから聞いた話を投下するよ。
伝聞語尾は鬱陶しいから外すね。

じいちゃんが小学校に通っていた頃。
じいちゃんは山間部の小さな村に住んでいて、よく山に入っていた。
遊び……もあるけども、山に入る理由の大部分は、
茸や山菜を取ったりウサギを捕まえるといった、食料収集だったのだ。
じいちゃんって6人兄弟の末っ子なんだけども、
じいちゃんと、三男・五男のじいちゃんの兄ちゃんが、その仕事を割り当てられてたんだ。
で、最初の頃は3人で茸なんか取ってたんだけども、その内じいちゃんも慣れてきたからっていうんで、
3人バラバラに山に入るようになった。

ある日、じいちゃんは、ウサギを捕まえる罠を仕掛けに山に入っていった。
罠を仕掛けるポイントってあるんだけど、今日は違うポイントを発掘しようと、
いつもとは違う場所にやってきた。
道なんてない。樹木と雑草で覆われた荒れた所を、ずっと登って行った。

で、この辺りかなと思われる場所にやってきて、さぁ罠を仕掛けるぞと腰を屈めた時だった。
ガサガサ
じいちゃんの後方から物音がした。
ウサギだったらラッキーだけど、猪だったらどうしよう……と罠を仕掛けようとした手を止め、
おそるおそる後ろを振り返った。
草陰に隠れよくは見えない。
けれども、草陰に隠れるのならば、ウサギかウリボーだなと思い、すくっと立ち上がってみた。
しかし、そこにいたのは鶏だったのだ。
村で鶏を飼っている○○さん(名前忘れた)のとこのかな?と思ったのだが、
こんな山奥まで鶏を放すわけがない。
野鶏か!とも考えてみたが、
こんな山奥にいるというのに、汚れ一つ見当らない、とても綺麗な毛並みだったので、それも違うと考えた。
では、何故こんなところに鶏が?

しばらくボーっとその鶏を見つめていたじいちゃんだったが、ある所に気がついた。



この鶏、鳴かないのだ。
首を振る動作、体の動き、見た目。
それらは全て鶏のそれだったのだが、鳴き声というのか、「コッコッ」っと小刻みに鳴くあの声がなかったのだ。
変な鶏だなぁ、でも捕まえたら母ちゃん喜ぶかなぁとぼんやり考えながら、その鶏に近づくじいちゃん。
鶏は動じず、雑草を啄ばんでいる。
よし、今だ!と鶏に手を伸ばしたじいちゃんだったが、何かに気がつき手を止めてしまった。
鶏の後方、5メートルほど先に家があったのだ。
鶏を見つけた時、この山を登ってきた時、そんな家など見当らなかった。
けれども、何故見落としたのか不思議に思うぐらい、とても大きな家。いや、屋敷だった。
こんな山奥に誰か住んでるのかぁ、知らなかったなぁ、
と、じいちゃんは鶏のことよりも、その家に興味が湧いてきた。
その屋敷は村の地主の家よりも大きく立派で、門もとても頑丈そうで重そうだった。
で、二階建てだった(なんか知らんがじいちゃんは二階建てだぞ!って強調して話してた)。
門は開いていて、中の様子が窺えた。

じいちゃんが門に近づいて中を覗いてみると、不思議な光景が広がっていた。
見たことも花々が参道横に咲き乱れ、塀の左右には小屋があり、その小屋に馬と牛が10頭ずついたのだ。
(繋がれていなかったらしい)
そして家の前には、先ほどの鶏と同じ鶏が5羽いた。
すげーなーと嘆息をするじいちゃん。
しかし、はたと気づいて体が硬直してしまった。



牛も馬も鶏も鳴いていないし、こんなに動物がいて花も咲いているのに臭いもない。
おかしい、変だ、と思うより先に怖くなってしまったのだ。
そして、玄関の戸がゆっくりと開いていくのを見て、「ギャー!」とじいちゃんは悲鳴を上げて逃げ出した。
全力疾走。
その家と反対方向に走ったら山を登ることになるというのに、
じいちゃんはパニックになっていて、反対方向に走ってしまった。
けれども、屋敷と反対方向に走っていったのに、いつの間にか山のすそまで下りて来ていた。
やった!と思ったじいちゃんは、そのまま自分の家まで走っていった。

家に着いたじいちゃんは、母ちゃんの元まで走り寄り、興奮しながらあの屋敷のことを話した。
すると母ちゃんは青ざめた顔をして、外に出て行ってしまった。
母ちゃんの様子を見たじいちゃんは、さらに怖くなってしまい、とうとう泣き出してしまったが、
すぐに母ちゃんが戻ってきてのを見て、泣き止もうとした。
(母ちゃんはじいちゃんが泣いたら、めちゃくちゃ怒ったかららしい)

母ちゃんは、父ちゃんを連れて帰ってきたのだった。
父ちゃんはすごい剣幕でじいちゃんから話を聞き、じいちゃんの手を握った。
「お前が見た家は、サイ○○サマ(忘れた)なんだ。挨拶はしていないだろ。だから今から謝りに行くぞ」

じいちゃんの返事も聞かず、父ちゃんはじいちゃんを連れて山のすそにある神社に向かった。
「『挨拶しなくてすいません』って謝りなさい」
父ちゃんがそう言うもんだから、じいちゃんは黙ってそれに従った。

それからじいちゃんは、何度も父ちゃんや母ちゃんに「サイ○○サマってなんなの?」って聞いたのだが、
全く教えてくれなかったんだとさ。
ただ、「サイ○○サマに出会ったらきっちり挨拶しろ」って言われただけ。
その屋敷がサイ○○サマなのか、その屋敷に住むのがサイ○○サマなのかも、教えてくれなかったんだってさ。
じいちゃんはそれ以来、その屋敷をみた事はなかったという。

同じ体験をした人や、聞いた人っていないかな。
ちなみに東海地方の話。



>>>>サイ○○サマ>ここ一番重要なのに忘れんなよw


>>おじいちゃんはまだ生きていらっしゃるのかな?
>>もし生きていたら「サイ○○サマ」の正確な名前を確認して欲しいなあ。

>>あと、>>しかし、最近母ちゃんからある出来事を聞いたことで、
>>じいちゃんの話は本当かもしれないって感じてきたんだ。

>>の部分が非常に気になるので、もしも差し支えなかったら
>>「ある出来事」についても詳しく教えて下さい。



じいちゃんは15年前に他界して、もう一度聞くことは出来ないんだ。
でも、さっき別件で母ちゃんに電話した時に聞いてみたよ。
母ちゃんは「サンユキサマ」って覚えてた。
でも私は「サイ〜」って名前だと記憶してるんだよな。
あ、じいちゃんは母方のじいちゃんね。

で、ある出来事っていうのは、母ちゃんが家族旅行でじいちゃんの故郷に行った時のこと。
母ちゃんが結婚する前だから、昭和30〜40年代だと思う。
じいちゃんは故郷に着いたといなや、山に向かったんだと。
黙々とじいちゃんは山に登っていくし、ばあちゃんと母ちゃんは仕方なくじいちゃんを追って登ったんだ。
かなり山の奥までやってきた時。
いきなりじいちゃんが立ち止まり、がくっと膝を落としたんだってさ。
どうしたんだと母ちゃんとばあちゃん。
じいちゃんが立ち止まったのは、拓けた所だったらしい。
で、じいちゃんいきなり号泣。
「すまんかった……すまんかった……わしは出来なんだ……」 って呟きながら。

その話を聞いて、私はじいちゃんが山男と出会った話を思い出したんだ。
それで、あれは与太話じゃなかったんだ、って思えてしまってな。
需要あれば山男の話も投下するよ。

ラベル:雪山・山
posted by horrors at 22:45| Comment(0) | ほんとにあった怖い話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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