2016年12月15日

山で出会った大男

ある時、いつものように山に入ったじいちゃん。
その日は、ウサギの罠の様子を見ようと思っていた。


全部で5つ仕掛けたから、近いポイントから順に回っていくことにした。
1つ目のポイントは山に入ってすぐの所。罠にはかかってない様子。
2つ目・3つ目はそこから左へ行った所。それらもかかっていなかった。
今日は不調だな、と感じながら4つ目のポイントへ向かうじいちゃん。
4つ目のポイントは、3つ目のポイントから登った所だった。
そのポイントは絶好のポイントで、勝率も高かった為、じいちゃんは意気揚揚と罠を確認してみた。
しかし残念ながら、そこも不発。

どうしたもんかな、と罠の近くに腰をかけ、ぼんやりと罠を見つめていると、ある事に気が付いた。
罠は外されていたんだ。
ウサギは一度捕まり、そして誰かが罠を外している。(自力で脱出出来るもんじゃなかったらしい)
その事にじいちゃんは腹を立て、急いで5つ目のポイントへ向かった。
5つ目のポイントは、4つ目のポイントに近い所。
だからそこも外されている可能性があったからだ。
「くそう、横取りしやがって」と、誰だかわからない犯人を憎憎しく思い、登っていった。

そして5つ目のポイントの傍までやってきた時、
罠の辺りに、傍目からでも分かる大きな人が屈んでいるのを見つけた。
あいつだ!
声を上げずに、近くに佇んでいる樹木の影に隠れるじいちゃん。
そしてそっと様子を窺った。
その大きな人は、罠の辺りにじっと屈んだまま動かない。
と、ガサガサと物音が立ったと思ったら、すくっと立ち上がった。
やはり罠を外していたのは、そいつだったようだ。



しかしそれよりも、その大きな人に目が行ってしまい、じいちゃんは怒鳴りつけることも出来なかった。
じいちゃん曰く、「ジャイアント馬場よりでかいぞ!あいつの倍はある!でっかいぞー!」ってぐらいでかい人。
そんな大男、じいちゃんは今まで見たことがなかった。

じり…っと後退りしたじいちゃんの足が、辺りに生えていた雑草に触れ、ガサリと音を立ててしまった。
大男は物音に気づき、「誰かおるのか」と聞いてきた。
じいちゃんは逃げたいのに怖くて動けなかった。
大男は続けて、「罠を仕掛けたのは、お前か」と聞いてきた。
そしてそのまま振り返り、じいちゃんの姿を捉えてハハハと笑い声を上げた。
「取って喰ったりせん。茶と柿があるぞ。こっちに来んか」
そんなことを言われても、体が言う事を聞かないから行くことは出来ない。
じっとしているじいちゃんを見て、大男はそれに気づいたのか、
「体が動かんか」と尋ねながら近づいてきた。
ひぃっと息を飲むじいちゃん。

大男は樹木を挟んでじいちゃんの隣に腰を下ろし、干し柿をじいちゃんに手渡した。
食べ物を貰うということで警戒心がほぐれたのか、じいちゃんは腰が砕けるように尻餅をついた。
そして、大男の外見をまじまじと見てみる。
真っ黒に日焼けした肌、ぼさぼさに伸びきった髪、背中には薪が積まれ、獣臭が鼻をついた。
「お前があの罠を作ったのか」
干し柿を食べているとそう尋ねられ、「うん」と思わず返事をしてしまった。
「そうかそうか。あの罠は上出来だ。お前は器用だ」
そこで罠を外した犯人だということを思い出し、じいちゃんは小さく聞いてみた。
「なんで罠を外したの?」
すると大男は、竹筒に入った茶(水かもしれない)を飲み、こう答えた。
「罠にかかっとったウサギは、まだ小さかったからな。小さいのは見逃してやってくれんか」
「わしはいつも見逃しとる!」
「おお、そうだったか。お前は麓の村の子供か」
「そうだ」
「ふむ……お前の村はよく出来た村だ」
「どういうこと?」
「お前の村は、生き物を無闇に殺したりせん。
 木もそうだ。切り方も、切る木の選び方もちゃんとしとる」
じいちゃんはさっぱりわからなかったけれども、自分の村を誉められているのはなんとなくわかったので、
なんだか嬉しくなった。



しばらく、2人で山について話をしていた。
(どんな内容だったかは、じいちゃんが手振り身振りで話してくれたけども、さっぱり忘れた)

もうどれぐらい時間が過ぎたのかはわからないが、「さて」と、大男がいきなり立ち上がった。
「もう戻らんといかんからな、お前も気をつけて下りるんだ」
「家はどこ?」
「お前には来れん所だ」
薪を背負い直す大男は、最後にこうじいちゃんに言い残した。
「くれぐれも山を乱さんようにしてくれ。わしらが生きていけんようなるからな」
「わしは乱してない!」
じいちゃんの声にハハハと笑いながら、大男は山の奥へと消えていった。


ラベル:雪山・山
posted by horrors at 21:32| Comment(0) | ほんとにあった怖い話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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